かつて海の道しるべだった灯台。いまはその役割が変わってきています。
6月7日、東京で「海と灯台のまち会議」が開催され、灯台の存在意義や活用方法などについて、さまざまな分野から人が集まって意見交換が行われました。
「新しい灯台の魅力、人と海の関係、海と地域の関係や、灯台との関係を見つめ直して、新しい企画を創造してもらうためのイベントです」 (日本財団 海野光行常務理事)
イベントで紹介されたのは「新たな灯台利活用モデル事業」という取り組みです。これは灯台の歴史や役割に関する調査研究、施設の設備、利活用についてのサポートを行うというものです。
事例の一つとして紹介されたのは北海道・函館の恵山岬(えさんみさき)灯台の調査研究事業です。
「明治から昭和にかけて、灯台守と呼ばれる技術者が家族とともに灯台に住み込み、24時間体制で灯台を守ったというエピソードには多くの市民が興味を示してくれました」 (函館市 大泉潤市長)
調査研究の結果、灯台を軸に函館東部の自然や歴史を語る新たなストーリーができたそうです。
愛知県からは、一般社団法人美浜まちラボの林達之さんが「灯台と地域振興」をテーマに、美浜町の野間崎(のまさき)灯台の活用について紹介しました。
美浜まちラボは、2015年から「野間灯台登れる化プロジェクト」を推進してきました。
「『登れる灯台にしよう!』といろんなことをやってきました。ライブをやったり、ピザ窯を作って焼いてもらったり、クラウドファンディングでお金を集めたり、100年史を作ったり」 (林さん)
2022年2月には海上保安庁から「航路標識協力団体」に指定され、同年4月から灯台の一般公開を開始しました。
「野間崎灯台がいろんな人を導いて、船だけでなく、人も導いて、何かをやっていける雰囲気を作るためのシンボルにしていきたい」 (林さん)
ほかにも、鳥取県の長尾鼻(ながおはな)灯台を通じて地域学習を行った学生や、和歌山県の潮岬(しおのみさき)灯台で「灯台のホテル化」を進める企業など、さまざまな事例が紹介されました。
長年、灯台の利活用に関わってきた日本財団の海野常務は、「異分野の方々を巻き込んで新しい灯台の未来を描いてもらいたい。灯台の未来を考えていくと日本だけでなく、世界に広がっていくような展開も考えていきたい」と語りました。