レポート
2025.12.12

“河川から海へ流入するごみの実態を解明!”ごみの流れに着目して伊勢湾流域圏の清掃活動でごみの調査を行いました

海と日本プロジェクトin愛知県と八千代エンジニヤリング株式会社は、愛知県・三重県・岐阜県と名古屋市の伊勢湾流域圏で行われている清掃活動と連携して、ごみの調査を行いました。庄内川水系を中心に、川から海へのごみの流れに注目して”どんなごみ”が”どれくらいの量”落ちているのか、記録を取りながら調べてみました。その結果、一番多いごみや、ごみが多く集まる場所が明らかになりました。

 

<連携して調査したイベント>

■10/4(土) Hisaya Plogging Weekend 2nd(名古屋市 久屋大通公園) <連携先>ミライ Labo、久屋プロギング

■10/12(日) 22世紀奈佐の浜プロジェクト <連携先>答志島奈佐の浜海岸清掃22世紀奈佐の浜プロジェクト委員会

■10/18(土) 2025秋の藤前干潟クリーン大作戦 <連携先>藤前干潟クリーン大作戦実行委員会

■11/8(土) 川と海のクリーン大作戦in土岐川 <連携先>岐阜県土岐市

【調査方法】

活動場所に2m四方の調査区画をロープで設定し、その区画内にあったごみをすべて収集します。収集したごみは、環境省が作成した「地方公共団体向け漂着ごみ組成調査ガイドライン」(令和7年度5月第4版)に掲載されている分類表に基づき、プラスチック・ゴム・ガラス等の12種類の大分類に分け、それぞれの個数を集計しました。〈調査期間〉2025年10月4日(土)~11月8日(土)

【調査地点】

① 10/4(土) Hisaya Plogging Weekend 2nd

名古屋市中区栄に位置する久屋大通公園は、都市の中心部を南北約2kmにわたって貫く大規模な公園です。この公園は、戦後の都市計画の一環として名古屋のメインストリートである「100m道路」の中央帯を利用して整備され、「日本の歴史公園100選」にも選ばれています。しかし、公園内ではごみが散乱している現状が見受けられました。写真の通り、ごみ箱からあふれ出たごみがそのまま無造作に放置されている状態です。今回の調査では、特に人が留まりやすいベンチ付近に調査区画を設定し、ごみの種類を記録しました。

調査区画内で収集されたごみのうち、「プラスチック」類が38個と最も多く、次いで「紙・段ボール」類が多い結果となりました。 公園周辺にはコンビニエンスストアが多数立地していることから、近隣で購入した食品や飲料が公園のベンチなどで消費され、そのごみがそのまま放置されていると推測されます。実際、ベンチ周辺には飲食後のごみが散乱している状況が見受けられました。さらに他では見られなかった点として、プラスチック類の内訳をみると、その大部分にあたる34個が「食品の包装容器」であったことと「たばこの吸い殻」が大量に落ちていたことが挙げられます。「たばこの吸い殻」については、分類表に項目がありませんでしたが、収集量が多かったため、特記しました。吸い殻はベンチ周辺に集中しており、その場所が喫煙場所として利用されている実態がうかがえます。

② 答志島奈佐の浜海岸清掃

奈佐の浜は三重県鳥羽市答志島の北側に位置する海岸です。伊勢湾の入り口付近に位置し、地形や潮流、風の関係で、伊勢湾に流入する河川から流出したごみや海で発生したその他の漂着物が非常に集まりやすい場所になっています。

「プラスチック」類のごみは111個と際立って多く、その次に「発泡スチロール」が多い結果となりました。写真から分かるように破片類のごみが多くみられ、プラスチックや発泡スチロールが漂流や経年劣化の過程で微細化した「破片」として大量に打ち上げられていることが分かります。これらは、伊勢湾流域から川を通じて流出したものに加え、伊勢志摩周辺地域で盛んな養殖業で使用されるフロート等が破損・微細化したものも含まれていると推測されます。

③ 10/18(土) 2025秋の藤前干潟クリーン大作戦

藤前干潟は愛知県名古屋市港区に位置し、庄内川が伊勢湾に注ぎ込む河口域に広がる、日本有数の大規模な干潟です。庄内川を通じて上流から流れてきたごみが、伊勢湾に出る手前で滞留しやすいポイントとなっています。

藤前干潟における調査では、他の地点と比較して収集されたごみの総量が格段に多い結果となりました。なかでも特筆すべきは「ペットボトル」の量です。その数は今回の調査地点の中でも群を抜いており、上流からの生活ごみが河口域に集積している実態が浮き彫りとなりました。加えて、原型をとどめたごみだけでなく、プラスチックなどの「破片ごみ」も多くみられ、大小様々な形状のごみが堆積していることが特徴的です。

④ 川と海のクリーン大作戦in土岐川

土岐川は一級河川「庄内川」の岐阜県内における名称であり、岐阜県から愛知県に入った地点で名前が「土岐川」から「庄内川」へと変わるため、水系としては庄内川と全く同じ一本の川です。ごみが川から海へと至る移動ルートの上流部分として、この土岐川を位置づけました。

設定した調査区画内における収集物は、ゴムサンダル1個のみであり、ごみの数としては非常に少ない結果となりました。しかし、調査場所以外の清掃活動箇所では、特に橋の下や背の高い草むらの中などの人目に付きにくい場所に、ペットボトルや空き缶などのごみが散見されました。一方で、たばこの吸い殻はほとんど見当たらず、背の高い草むらなどの一部の隠れた場所を除けば、全体的には他の調査地点と比較してごみの総量は少なく、比較的良好な環境が保たれているといえます。

図1<各地点における大分類ごとのごみの個数>

図2<ごみの内訳(土岐川・藤前干潟・奈佐の浜・久屋大通公園)>※土岐川はごみが1つのみだったためゴム100%になっています。

 

【4地点の比較考察】

1. 全体的な傾向:4地点すべてにおいて、最も多く収集されたのは「プラスチック」類でした。食品容器、ペットボトル、あるいはその破片など、形状は様々ですが、いずれの場所でもプラスチックがごみの大半を占めており、流域全体を通してプラスチックによる環境負荷が広がっている実態が浮き彫りとなりました。

2. ごみの量:河口域である藤前干潟が他の地点と比較して圧倒的に多い結果となりました。上流から流れてきたごみが、海へ出る直前の「出口」にあたる河口域に集積するためと考えられます。特にここでは、破片化する前の原形をとどめたペットボトルなどが大量に確認されており、河口域が海洋流出を食い止める最後の砦となっていることが明らかになりました。

3. ごみの流れと形状の変化:上流部と位置づけた土岐川ではごみの絶対量が少なく傾向がつかみにくかったものの、図2<ごみの内訳>から分かるように、市街地では投棄されて間もない原形をとどめた食品の包装容器などの生活ごみが多く見られました。 一方、河口域にあたる藤前干潟ではペットボトルや比較的形状の残った食品容器類が多く、漂着海岸である奈佐の浜では、長距離の漂流や波の影響で細かく砕けた破片類が多く確認されました。このことから、ごみは上流から移動する過程で形状を変えていき、各エリアで確認されるごみには、その段階ごとの特徴が顕著に表れていることが分かりました。

【これからの海洋ごみ対策について言えること(まとめ)】

今回の調査では、河川を通じて移動し、その過程で形状を変えながら海へ流出している実態が明らかになりました。このごみの流れを断ち切るには、愛知・三重・岐阜・名古屋の「三県一市」が一つの流域圏として連携し、各エリアの特性に応じた対策を講じることが不可欠であると考えられます。具体的には、ごみの発生源となるエリアでのポイ捨て防止を徹底することや、ごみが海へ出る直前に大量に集積する河口域において、ごみが原型をとどめた状態で効率的に回収すること、そして、上流から流れてきたごみや漁具の破片の散乱が目立つ漂着海岸では、回収活動に加え地域や関係団体と連携し、それぞれの発生要因に即した対策を進めることなどが挙げられます。

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