富士山や七福神、鯛など鮮やかな色合いで、漁師さんのお祝いに欠かせないのが「大漁旗」。
今回は、愛知県西尾市で大漁旗を制作している「工芸染色 まえ田」にお邪魔しました。
工芸染色まえ田の創業は江戸末期。古くは藍染めから始まり、はっぴからのぼり、幕など、染色、縫製にいたるまで職人の伝統の技を守っています。
西尾市のあたりでは、大漁旗を「たいりょうき」「福来旗(ふらいき)」などと呼んでいるそうです。大漁旗の歴史は江戸時代から始まった慣習で、漁に出た漁船が大量だった時、港で待つ家族や仲間へいち早くその成果を知らせるために船上に掲げるようになったと言われています。
その大漁旗をずっと制作し続けているのは、まえ田の6代目当主・前田和夫さんです。制作工程を見せていただきました。
まずは「下絵描き」です。前田さんは何も見ないで、白い旗に筆を使って下絵を描いていきます。
―――何も見てないですけどどうやって描いてるんですか?
前田さん 「そんな難しい質問しちゃあかんて(笑) あとで見て、大きすぎてもダメだし、小さすぎてもダメなんです」
続いて「筒引き」という作業です。前田さんは下絵の線に沿って糊をぬっていきます。
前田さん 「筒引きは大事な仕事で、防染糊(ぼうせんのり)を使って、旗の図柄の白い線の部分を浮き上がらせる染め方です。防染糊は、もち米と糠を練り合わせたものです」
糊が乾いたら、次は「染め付け」です。青や赤、鮮やかな色合いの染料を刷毛で塗っていき、大漁旗が完成します。
前田さん「なるべく同じ色が重ならないように、似た色を隣同士で使わないようにします。違う色をもってくる方がよく目立つので」
いま、船のお祝いでの大漁旗の注文は減ってきているそうです。勇壮に海にたなびく大漁旗の伝統文化、これからも大事にしたいですね。