干潟や藻場の生きものを観察するイベント「三河湾の生きもの観察会」が6月8日に、蒲郡市の竹島の海岸周辺で開催されました。愛知県が主催するこのイベントは「三河湾環境再生パートナーシップ・クラブサポーター講座」の1つとして開かれたもの。三河湾の海洋環境や、そこに生息する生きものの生態を知ってもらおうと企画されました。
そんな「三河湾の生きもの観察会」を取材させてもらいました!
愛知県では2012年度から、三河湾の環境を保全するための活動「三河湾環境再生プロジェクト」を行っています。生きもののすみかとなる干潟や浅場、藻場の保全活動・造成、海岸の清掃活動などを実施。海洋環境に興味を持ってもらうためのイベントも定期的に開催しています。
そうしたプロジェクトの一環で開かれた今回のイベント。参加者は小学生から年配の方まで、さまざまな年代の方が参加していました。
講師を務めたのは「蒲郡市生命の海科学館」館長の山中敦子さんと、嘱託専門員の小松薫さん。イベント前に小松さんは「例年、竹島周辺で見られる生きものが変わっています。どんな生きものに出会えるのか、私自身も楽しみです」と話していました。
↑「蒲郡市生命の海科学館」の小松薫さん
さっそく、タモとバケツを持って蒲郡市の竹島へ。道中は、竹島海岸周辺でごみ拾いをする人たちの姿もありました。こうした人たちの手があるからこそ、海の生きものがいきいきと暮らしていけるのですね!
↑「蒲郡市生命の海科学館」館長の山中敦子さんが、旗の代わりにタモを掲げて先導!
そして竹島に到着して、生きもの観察を開始! 波打ち際の岩をひっくり返したり、スコップで砂場を掘ったり、浅場にタモを入れてガバっと海藻を採ってみたり。皆さん、思い思いの方法で生きものを観察していました。
参加した子どもたちは、「やった! カニゲット!」「イソギンチャクが開いてる」「透明なエビもいた!」と海の生きものを見つけて笑顔たっぷり! 発見したらすぐさま「これは何ですか?」と山中さんや小松さんに質問をする様子も印象的でした。
中には「この貝殻、きれい~」と見つめる子も!
海藻に白く丸いものが絡みついたこちらは、イカの卵らしき塊。ちょうど産卵の時期のようです。
取材中に驚いたのは、ピンク色の花びらのように見える「ニシ貝」の卵。貝の卵とは思えないほどきれいな見た目をしています。
ニシといえば、タニシを思い浮かべますが、タニシは“田んぼにいるニシ”だからタニシと呼ばれているそう。生物の名前の由来を知ることができ、私自身も勉強になりました!
さらに、カレイの子どもを発見! 愛知県の環境局・水大気環境課の小川敏幸さんもそのかわいさに、捕まえた魚をトレイに入れて他の参加者に見せながら、魚の生態を分かりやすく解説していました!
“東北の珍味”といわれるホヤのなかまもいました。子ども時代のホヤは、貝というよりオタマジャクシのような姿かたちなんだそう。
山中さん:
「子どもの頃はお魚のように泳ぐけれど、岩にくっつくと泳ぐのをやめて、背骨のもとを捨てちゃうんです」
え! 背骨を捨てる!? 実はホヤは成体になると、「脊索(せきさく)」と呼ばれる背骨のもととなる器官が失われるといいます。自分から泳げなくする生きものがいるなんて……目からうろこですね。
こちらは藻場で発見したギンポとヨウジウオ。下のほうで楊枝のように細長~い姿をした魚が、ヨウジウオです。小松さんや山中さんも「去年はヨウジウオを見られなかったので、かなり珍しい」と感心していました。
そのほか、ウナギの稚魚やケフサイソガニ、イソギンチャクなど多種多様な生きものを発見しました。
こうした貝の卵や魚の稚魚などは6月のこの時期にしか見られないもの。夏本番になると、卵が孵化して成長するほか、暑さを避けるため海深くに潜ってしまうといいます。
「三河湾の生きもの観察会」を企画した愛知県の環境局・水大気環境課の小川敏幸さんは、今回のイベントを通して「子どもたちが笑顔で帰ってくれて良かったです」と話します。
愛知県 環境局・水大気環境課 小川さん:
「『海って楽しいな』と感じることで、三河の海洋環境を守りたいという思いが芽生えていきます。勉強をするだけでなく、実際に海の生きものに触れることが大切。これからも海にまつわるイベントを開催予定なので、たくさんの人に参加してもらいたいですね」
講師を務めた山中館長は、海の生きものを観察するイベントを、大人にも楽しんでもらいたいと語ります。
「実際に見て、触れて、体験することで海を身近に感じられると思います。大人が楽しそうにしている姿を見せることもすごく大事なこと。大人が学ぶ姿を見ることで、子どもたちが海に興味を持ってもらうきっかけになると思うんです。
今回も『これは何ですか?』『ギンポ見つけた!』と年代問わず、みんな目を輝かせながら観察していました。そうした機会を、これからも増やしたいです」
蒲郡市出身の筆者も、竹島にはこんなにもたくさんの種類の生きものがいるんだ、と驚かされました。実際に足を運んで、生きものを見ることで、海の豊かさを守る意識づけにつながります。身近な海や川の生きものを観察しに、出かけてみてください!
▼三河湾環境再生プロジェクト
https://kankyojoho.pref.aichi.jp/mikawawanpj/index.html
愛知県ではこのほかにも、船に乗って三河湾の環境調査を体験する「三河湾環境学習会」、干潟の観察や保護活動を体験する「三河湾環境再生体験会」、トークショーや体験会、海の幸の無料試食など、三河湾をいちにち満喫できる「三河湾大感謝祭」など、たくさんのイベントを実施しています。興味のある方は参加してみてはいかがでしょう!