「碧南海浜水族館」私たちが毎日当たり前に使っている水は、いったいどこからやってくるのでしょう? 意外と知らない「水」の旅路を解説してくれる特別展「源流をたどる 水はどこからやってくる?」が、碧南海浜水族館で開催されています。(※9月28日まで)「水」に生きる生物など、展示内容の一部をお届けします。
碧南海浜水族館は、全国各地から集められた約260種類の魚が泳ぐ水族館。碧南の観光スポットとして人気な場所で、地元の小学校では課外授業にも使われています。筆者が取材した日も、小学生の子どもたちが「見て!サメサメ!」「わー!エイだー!!」と、とても楽しそうに水槽を眺めていました。
今回見学した特別展「源流をたどる」では、私たちの生活に必要不可欠な「水」がどのように流れ、どんな生きものが暮らしているのかを、源流をたどるように紹介されています。
入り口の壁には、絵本作家・加古里子(かこさとし)さんによる絵本「かわ」を絵巻のようにつなげた、7メートルにも及ぶ作品も展示されています。
特別展を見始めて驚いたのは、水族館では珍しいヘビの展示があったこと。館内にいた子どもたちも「ねぇ、こっちにヘビいるー!」と、目を凝らして観察していました。
こちらは水田や河川に生息する「シマヘビ」。縞模様が特徴的で、カエルを餌にしています。
カメラ目線でこちらの様子をうかがうシマヘビさん。砂の中に顔をうずめたり、ガラスの上のほうをキョロキョロしたり、活発に動いていました!
シマヘビのすみかにもなっている水田は、多様な生態系のネットワークが形成される場所。両生類のカエルにイモリ、水生昆虫のドジョウが生息するほか、ヘビやサギといった捕食者にとっては大切な餌場になっています。
なんと、シマヘビの隣にはその“餌”となる「ヒガシニホンアマガエル」が展示されていました。アマガエルは、成体になるとアブラムシなどの稲を食べる昆虫を餌にするため、稲の生育を助ける役割も果たしています。
なんだかふてぶてしい顔をしていますが、カエルがいることによって、人間の “食”は支えられているのですね。
「川」の役割や特徴、川にすむ生きものたちが紹介されたコーナーでは、釣り人にはなじみ深いマハゼを発見。マハゼは河口に多く見られ、泥底に巣穴を掘って生活し、小魚や甲殻類などを餌にしています。
マハゼがすむ淡水には、生きものに必要な栄養分が豊富に含まれているといいます。しかも淡水と海水が交じり合う河口は塩分や水温の変化が生まれ、ボラやハゼ、シジミといったさまざまな生きものがすみやすい環境がつくられているんです。
生きものの展示だけでなく、川のなりたちと水の循環について図解で解説されていたのも印象的でした。
山間地や高地の雨が染み込んで地下水がたまり、その地下水が湧き出して川になる。やがて海に流れて、太陽の熱で蒸発して水蒸気に。水蒸気が冷えて雲ができたあと、その雲が雨を降らせて地下水がたまる――。
こうした自然の恵みによる水の循環があることで、地球にすむ生きものは生かされているのですね。
そんな川の源流は、どこにあるのでしょう? このコーナーでは三河の水源となる「矢作川」の源流と、源流域に生息する生きものたちが展示されています。
国土地理院の地図では、長野県下伊那郡根羽村と愛知県北設楽郡豊根村との境にある「茶臼山(ちゃうすやま)」が矢作川の源流点とのこと。しかし、長野県下伊那郡阿智村と平谷村にまたがる「大川入山(おおかわいりやま)」の西側も源流点の1つと考えられているそうです。
源流域は流れが速いため、生きものたちも流されないようにじっとしたり、動き続けたりといった特徴的な行動をするそうです。例えば「ヒガシヒダサンショウウオ」は幼生から爪を持っていて、川底の岩屋石にしっかりとつかまり、流されないようにするといいます。
山地の渓流に生息する「シマアメンボ」も、流されないように素早く移動するのが大きな特徴です。一時的に流れが緩やかになっている場所に、群れで固まって暮らしているとのこと。観察しているときも、小刻みに水面をスイスイと動いていました。写真撮影がむずかしいのもポイントの1つです(笑)。
この「源流をたどる」を企画したのは、碧南海浜水族館の学芸員・三嶋達郎さん。「川の下流や源流の環境を提示した上で、そこにどんな生きものがいるのかを展示するように工夫しました」と話します。
なるべく生きものが暮らす環境に近づけるために、水槽内の木や水草などは現地に生えているものを装飾。「ミナミメダカ」の水槽には、田んぼを再現するために稲が植えられています。
「身近にある田んぼと比べて生育状況は良くありませんが、2カ月経ってようやく育ってきました」とうれしそうな三嶋さん。最後に「暑い日が続く中でも、水族館で涼みながら魚を見て、『楽しかったね』と笑顔で帰ってもらいたい」と朗らかに話していました。
「源流をたどる 水はどこからやってくる?」は9月28日(日)まで開催されているので、碧南市を訪れた際はぜひ、足を運んでみてください!